屋久島が世界遺産になった理由|人生で一度は見ておくべきな屋久島の森
屋久島は日本で最初の世界自然遺産。
1993年に東北の白神山地と共に登録されました。
一度は行ってみたい日本の世界遺産として常に上位にランキングされ、巨大で長寿な縄文杉や苔の美しい白谷雲水峡、水のきれいな川や海などの大自然が魅力です。
この記事では屋久島が世界遺産に登録された理由や背景などを中心に、世界遺産屋久島について解説します。
屋久島が世界遺産に登録された理由
世界遺産に登録される際にどこのどんな部分が評価されたのかが明文化されます。
世界遺産登録基準は「自然の美しさ」と「生態系」
屋久島が世界遺産になった登録基準をざっくりまとめると下記の通り。原文はわかりにくいので意訳しました。
登録理由概要
世界的に特異な樹齢数千年のヤクスギをはじめ、多くの固有種や希少種を含む生物相を有するとともに、植生の典型的な垂直分布がみられるなど、特異な生態系とすぐれた自然景観を有する。
環境省
登録基準は大きく分けると「自然景観」と「生態系」の部分で評価されました。
「自然景観」では下記の2つが主な理由
- 小規模な島の中に標高差2,000mの急峻な地形があること
- 樹齢数千年という巨木である屋久杉の生育地であること
「生態系」では下記の2つが主な理由
- 北緯30度なのに暖温帯地域の現世的な植生が海岸から頂上まで連続的に残っている
- 自然分野の学術的な研究を行うのにとってもいい場所
世界遺産を「遺せる」も登録の大切な要因
さらに、そんな重要なエリアが未来永劫存続していくための条件も大切。
ポイントは「そこそこの面積」と「法整備」です。
こういった、重要なエリアがしっかりとした大きな面積で残っていて、さらにそれらを保護するための法律の整備もしっかりあるというのも、世界遺産に登録されるための重要な指針。
世界遺産ですからね「遺す」ための仕組みが備わっているのも大切です。
実際世界遺産エリアの多くは国内の自然保護の法律ではトップクラスの保護が掛かっているところが中心。
明日、開拓して住宅地になるかも〜なところは、当然ながら世界遺産としては不向きとされてしまいます。
屋久島の世界遺産の概要
そもそも、屋久島の自然はどんなところ?ということですが、屋久島がいつから世界遺産になったのか登録の歴史や屋久島の観光と世界遺産の関係などを解説します。
屋久島が世界遺産登録されたのは1993年
屋久島が世界遺産に登録されたのは1993年の12月。
東北の白神山地ともに日本の世界自然遺産として、はじめての登録になります。
現在2023年時点で、国内の世界遺産は下記の5つ。
- 屋久島(登録平成5年12月)
- 白神山地(登録平成5年12月)
- 知床(登録平成17年7月)
- 小笠原諸島(登録平成23年6月)
- 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(登録令和3年7月)
日本には世界文化遺産は25箇所ありますが、それに比べて世界自然遺産はたったの5箇所しかありません。
それほど、自然遺産の登録は難しい(富士山は自然遺産では登録できなかった)ようです。
国内で最初に屋久島と白神山地を申請した理由は、誰が見ても文句なしの日本を代表する自然だったのでしょう。
屋久島の世界遺産ともののけ姫は関係がある?
ジブリファンなら屋久島といえば「もののけ姫」を思い出すことでしょう。
屋久島の世界遺産が1993年に登録。もののけ姫の映画の公開が1995年。時期も近いので、なにか関係があるのでは?とついつい勘ぐりたくなります。
「屋久島はもののけ姫の舞台になった」みたいな事がよく言われます。
ですが、正確には「もののけ姫の映画に出てくる自然のイメージは一部、屋久島の森をモデルにした」と言ったほうが良さそうです。
というのも、実際に1995年に2回ほどジブリのスタッフが屋久島を訪れ、ロケハンをしています。
屋久島をロケハン先に取り上げた理由は宮崎駿監督が「スタッフに日本の自然の手がかりを与えるため」とのこと。
実は、宮崎監督をよく知る鈴木敏夫プロデューサーによると、宮崎監督は「もう一回屋久島でやろう」と言ったそうです。
もう一回というのは、宮崎監督は実はもっと以前、屋久島を訪れて原生的な自然を見ているとのこと。それがきっかけでナウシカを作ることに繋がったそうです。
つまり、宮崎監督はナウシカで「一度は屋久島を使っている」のです。
スタッフにきっかけ(日本の自然の手がかり)を与えるためにもう一度、もののけ姫のイメージ作りに屋久島を取り上げたとのこと。
なので、屋久島がもののけ姫の舞台になった、といのはちょっと違うみたいです。
実際に、白谷雲水峡の人気スポットである「苔むす森」はかつて、「もののけ姫の森」と名前をつけていた時がありました。
どうやら無許可だったようで、ジブリから「その名前はちょっと・・・」と言われ名称を変更したという経緯があります。
確かにそんな名前が付いていたら、そこが舞台だと勘違いしてしまいますものね。
それにしても、
- ナウシカの映画が公開されたのは1984年。
- 屋久島が世界遺産になったのは、それから9年後の1993年。
- そして、もののけ姫が公開されたのが1995年。
・・・屋久島が世界遺産に注目されるもっと以前に、宮崎監督は屋久島の自然を知っていたとは、アンテナが鋭すぎる!と言わざるを得ません。
グラフで見る屋久島観光客数の増減
屋久島の観光客数は2007年頃をピークに減少傾向にあります。
かつては、観光客数が少なかった屋久島も、世界遺産になったおかげで観光客が増えた、とよく言われます。
屋久島が世界遺産登録は1993年です。その前後の1989年〜2015年の観光客数の変遷を下記のグラフに表してみました。
グラフを見ると、1993年に世界遺産になってすぐに爆発的に観光客数が増えたわけではなさそうです。
また、もののけ姫の映画と関係が深い屋久島。世界遺産登録から2年後にもののけ姫が公開されますが、グラフから見るとその影響ですぐに爆発的に増えたというわけではなさそうです。
どちらかと言うと、2007年まではゆっくりと、と観光客数が増えています。
何かがきっかけでブームのように一気に増えたという印象はありません。
ただ、その後2006年〜2008年頃をピークに、屋久島の観光客数は減っていきます。
その原因は正確には検証がなされていませんが、山ガールブームや世界遺産ブームが一段落したのかもしれません。
観光地にとって観光客が減ることはあまり喜ばしいことではありません。
ですが観光客が減ると、屋久島のような自然の素晴らしさが魅力の観光地にとっては、森が静かになりより屋久島らしさを感じることができます。
屋久島の環境が持続的に維持され、屋久島の観光業も安定的に維持されていくほうが大きなブームの増減があるよりはいいのではないでしょうか。
屋久島の良さを沢山の人に知ってもらいたい筆者にとったら、観光客の減少は複雑な気持ちになりますが、程々の観光客数で推移していくのが屋久島にとっても、お客さんにとっても良いのではないかと思います。
屋久島の世界遺産は観光と自然保護を両立できるか
屋久島が世界遺産になり観光と自然保護が両立できるのか?とよく議論されますが、筆者の考えとしては基本的にできると思います。
屋久島は世界遺産になったから、自然が荒れたという見解への反論
世界遺産という権威的なラベルによって、屋久島の観光が盛んになったことは事実です。
それにともない、縄文杉トレッキングなどの自然を楽しむアクティビティーが盛んになりました。
その部分に関して、ネットなどを見ていると、登山者が自然に入ることで、道が荒らされ自然が壊されているとう論調も見かけます。
でも、それは本当でしょうか?
確かに、人々が森に入れば、根っこは踏まれて、土は削られるかもしれません。そんな、人々の踏圧から道を守るために、木道なども作らなくてはいけなく、事実登山道の整備が進みました。
きっと、「少し」は自然を荒らしたでしょう。
でも、それと引き換えにたくさんの人が屋久島の深い自然体験を得て、より良い自然体験をしているのも事実です。
多くの人の心に自然を大切に思う気持ちが芽生えるというメリットもあります。
反対に、屋久島の自然を観光地化しないことで自然は守られるのでしょうか?
以下、考察です。
屋久島の森はかつては重要な木材供給地だった
屋久島には手つかずの自然が残されているイメージですが、実際には屋久杉の伐採跡地だらけです。
悲しいですが、森の中を歩くとたくさん点在している巨大な屋久杉の切り株がその証拠。
江戸時代から始まった屋久杉の伐採は、高度経済成長期にピークについ最近まで続いていました。
もし、もっと昔に屋久島の自然の価値が認められて、世界遺産になっていたら屋久島の森は切られなかったかもしれない・・・。
経済の発展とともに自然の価値が見直されて、世界遺産という条例ができたのでしょうが、自然に敬意を払うことが最優先事項であれば、屋久島の森はもっと残されていたのかもしれません。
本当に怖いのは人々が自然に興味を持たなくなり、自然に敬意を払うことをしなくなった時だと思います。
そして、かつては諸々の事情があり、屋久島の森を切り続けていました。
屋久島の森を大切に思ってくれる人がたくさんいたら、簡単には伐採できない
もし、屋久島の森の素晴らしさが未来永劫認められていて、屋久島の自然を楽しむ人がたくさんいたら、それだけ見るべき価値があるということ。
逆に、誰も屋久島の自然を見に来なくなってしまったら、「見る価値ないんでしょ」と思われてまた、屋久島の森は伐採されるかもしれません。(実際伐採され続けてきました。)
屋久島の森を散策するのは、少し登山道は荒れるかもしれません。根っこも踏んでしまいます。でもその自然に価値があるんだということを、その自然を楽しむという行動で示しています。
声高らかに「自然保護してます!」なんと言わなくとも、そこを歩くだけでその自然の価値を認め(無意識的かもですが)自然保護に繋がっていると考えると、けっこう嬉しくないですか?
根っこを踏んでしまう➝自然破壊なんて、正直めちゃくちゃ小さなことで、自然破壊とも言えません。
そもそも、自然ってそんなやわじゃないし、ちゃんと復活するし、自然なめてもらっちゃ困るという感じです。
自然の中で遊ぶことは、自然保護の心を育てる
ということで、観光と自然保護ということで言うならば、一番簡単な自然保護はその自然でしっかり遊ぶことだと考えます。
しっかり遊んでその自然に関心を持つことが、楽しみながら、しかも簡単にできる自然保護の一つでは無いでしょうか?
難しいことを考えずに、自然の中で遊ぶだけでもその自然に価値が見いだされる。
もし、「価値が無い」とみなされた自然は壊され、別のものに作り変えられてしまうかもしれません。
かつての屋久島の森がそうだったように。
なので、大手を振って屋久島の自然で遊んでくださいね。難しいことは考えずに!
まとめ|屋久島の世界自然遺産の森は人生で一度は見ておくべき
世界遺産という権威的なラベルを付された屋久島ですが、ひとたび屋久島の自然を体験すれば、世界遺産に相応しい理由がわかると思います。
なので、ぜひ一度、そして早いうちに屋久島の世界遺産を体験してみて下さい。
上手く言えませんが、素晴らしい屋久島の自然を1日も早く見ておいた方が、その後の人生がきっと豊かになりますよ。