樹齢数千年といわれる縄文杉。世界的にも稀な長寿の木です。
ところで、みなさんはこの縄文杉がいったい、いつまで生きられるのかと思いますか?
「今まで長く生きてきた木なのだから、これからもしばらくは生きているんじゃないの?」
じっさい、僕も最初はそう思っていました。
でも、それってあくまで先入観。実は真逆で一番寿命が近い木が縄文杉なのかもって最近思うようになりました。
今回はその理由について記事にしたいと思います。
2分くらいで読めるので、ご興味のある方はどうぞ。
最近天候が荒れてきているぞ!縄文杉は大丈夫かな?
ここ最近の気候の特徴なのか、豪雨や強風などの威力が以前と比べて大きくなってきているような気がします。
最大瞬間風速が60mを超えるようなの台風や、数十年に一度と言われるほどの豪雨などが、日本各地で観測されるようになりました。
メディアを通じて伝えられるこのような驚異的な災害にも、少し慣れっこになってきているような気がします。
そして、この屋久島でも今までの経験が通用しないような荒天に見舞われることも多くなってきました。
そんな悪天候の度に思うのが、「屋久島の縄文杉はこの天気の中、無事に立っていられるのだろうか?」ということ。
縄文杉は今まで数千年という長い間、一度も倒れることもなく生き続けてきました。
そんな圧倒的な存在を目の当たりにすると僕らは、何か縄文杉だけ持ち合わせている特別な「力」や「秘密」があるような気がしてきます。
けれど、それってただの先入観なのかもしれません。
ただ、偶然にも縄文杉は今まで長く生きられただけであって、特別な力など存在していないのだとしたら・・・。
長く生きているほど体は大きくなり、老衰により体を支える力も低下してくるはず。
であれば、強風で風圧を強く受けたり、病気や腐れによって倒れる可能性が一番高いのが縄文杉のはずです。
いちばん、長寿の木こそ、いちばん寿命に近い。
当たり前といえば当たり前の事ですが、僕らは圧倒的な長寿の木を前にしてその事実を、時々忘れてしまいます。
縄文杉をご案内するツアーを開催する者としては、来年もさらにその先もずっと縄文杉が生き続けているという前提で、ツアーを開催&お客様を募集しています。
ただ、それが未来永劫続くわけでもなく、生あるものは必ず死にゆく日が来るのは間違いないという事実。
僕がそんな考えに至ったわけには、屋久島
2009年に倒れた翁杉
実は同じようにいつでも見られるだろうと思っていた巨木が、ある日突然倒れたという出来事が2009年にありました。
幹周りの太さで比べたら縄文杉について太いとされていた「翁杉」です。
- 縄文杉の胸高周囲(16.3m)
- 翁杉の胸高周囲(12.6m)
- 大王杉の胸高周囲(11.1m)
推定樹齢は2000年とも言われ(個人的には太さからそれ以上と思ってます)、屋久島を代表する巨木の一つでした。
この翁杉が倒れた時は台風でもなんでもない穏やかな日で、自重と木に着生する植物たちの重みに耐えきれずに倒れたとされています。
倒れてから解ったのが、幹の内部が90%近く空洞化していたということ。
どうやら老衰により幹が腐り、自分の重さを支えるだけの力が残っていなかったようです。
この翁杉だけではなく、屋久島の森にはかつては立派に立っていた、名のある巨木たちがいまでも転がっています。
トロッコ道沿いに横たわる「仁王杉(吽行)」、屋久杉ランド内「蛇紋杉」などはその代表的な木です。
倒れてもなお存在感を放っているのがすごいですが、やはり立っている時に見たかった木々たちです。
「いつかは見たい縄文杉」だけど、いつまでもあるとは限らない
よく友人から「いつか屋久島に行って、縄文杉を見てみたい」と言われることがあります。
もしかしたら、この記事をお読みいただいている方の中にもいつかは縄文杉へ!とお考えの方もいらっしゃる方もいるかもしれません。
ただ、一年後、1ヶ月後、1日後、どの未来においても縄文杉が生きている保証はどこにもなく、かつての翁杉のように昨日までは立っていたのに、今日倒れてしまったという日が来るかもしれません。
むしろ、長生きをしているからこそ、生命として死に近いのであり、その残り時間は少なくなっているはずなのです。
いたずらに不安を煽るような書き方はしたくないのですが、もしいつか縄文杉を見てたいとお考えの方は、意を決して早めに縄文杉を見にきてください。
屋久島は旅行の日数も必要だし、交通費も高額だし、縄文杉に行くのであれば体力と装備の準備もしなければならないので、そう簡単ではないかもしれません。
どこかで「えいやっ!」と意を決さないと、なかなか実行に移せないのが屋久島旅行。
ただ、縄文杉も限りのある命ですので、いつまでも長生きしているとは思わず、生きているうちに見ておくのが絶対いいはずです。
写真や映像でしか見たことがない縄文杉の、実物の迫力を感じたい方はお早めに屋久島にいらっしゃることをお勧めします。
もし、体力に不安があってという方はこちらの記事をどうぞ。
