屋久島の「ヤクスギランド」はどんな所?150分コースを現地ネイチャーガイドが解説
屋久島といえば、縄文杉や白谷雲水峡が有名ですが、もうひとつの魅力的な場所として外せないのが「ヤクスギランド」です。
「ヤクスギランド」という名前は少しカジュアルな印象を受けますが、実際には、 屋久杉が立ち並ぶ、息を呑むような美林が広がっています。
この記事では、ヤクスギランドの魅力を存分に味わえる 最長の150分コースを、写真と共に見ながらご紹介します。
まるで映画のワンシーンのような、静寂の森 を歩けば、日々の喧騒から解放され、心身ともにリフレッシュできること間違いなし。
さあ、あなたも屋久島の豊かな自然に抱かれる、忘れられないトレッキング体験へ出発しましょう!
ヤクスギランドへのアクセスは安房の町から車で30分
ヤクスギランドは標高1000mの位置にあります。安房の町からレンタカーを使って30分ほどの場所です。
1日2便のみ安房からバスも出ています。車を運転されない方はバスで行くことも可能です。
参考:種子屋久交通バス時刻表 (左下 合庁前⇨紀元杉を参照)
ヤクスギランド入り口には無料の駐車場があります。この日はまだ他の車は皆無でした。
入り口にはお手洗いが併設された施設があります。まだ朝早いので店自体は閉まってますが、お手洗いは別の入口から入れるので使用可能です。
お手洗いはチップ制です。ヤクスギランド内は携帯トイレブースしかありませんので、ここで必ずお手洗いを済ませて行きましょう。
外にあるオブジェらしき屋久杉の丸木。中は公衆電話です。現在ヤクスギランド内はドコモとauの電波が入ります。以前は電波が届かず、山中では貴重な連絡手段として使われていました。
入り口にはヤクスギランド内のコースについての看板があります。
- 30分コース
- 50分コース
- 80分コース
- 150分コース
まで設定されています。
時間のない方は30分コースや、50分コースなどもあります。スケジュールに合わせて選ぶことができますね。
ヤクスギランド150分コースを解説
入り口はここから。150分コースはなかなかの登山道です。登山靴や雨具などもしっかりと持っていきます。
8時頃になると、管理棟に受付の人がいて、協力金の徴収をしています。朝早くて誰もいない時は協力金ボックスがあるので、協力金を払う方はこちらにお金を入れていきましょう。
それでは早速中に入っていきます。中に入ると早速出てくるのが「くぐり栂」です。
大きな栂の木の下が空洞化していて、そこをくぐって行くようになっています。
空洞化している部分には、元々倒木や切り株などがあり、その上に生えたのがこの栂の木です。
やがって土台にあった倒木は朽ち果て、そこが空洞化したというわけです。
くぐり栂の看板の脇には、こんなものがありました。ヤクスギランドはスマホの電波がつながるので、スマホをタッチすると情報が見られるようになっています。
最初は舗装された歩きやすい道。最初はね。
ヤクスギランドの最初は綺麗に舗装されて、非常に歩きやすい道になっています。
主に30分コースと50分コースはこのような道なので、特別な登山の装備ではなくとも歩くことができますね。でも、この歩きやすい道は最初だけです。後半にかけて道はしっかり登山道になっていきます。
江戸時代のヤクスギ伐採の歴史を感じながら
道の途中には大きな屋久杉の切り株も出てきます。
200〜300年前の江戸時代に伐採されたであろう屋久杉の切り株です。こんな昔の人々の生業の跡がまだ朽ちずに残っているのが屋久島の森。
このような説明看板もあるので、それらを見ながら歩いて行くと屋久島の歴史も学ぶことができます。
ちょっと寄り道して千年杉方向へ
屋久島では樹齢1000年以上の天然のスギを「屋久杉」といい、1000年以下のスギは「小杉」という言い方をします。
その木が1000年かどうか見分けるポイントは幹の直径が1mを超えていれば、1000年ぐらいという大雑把な見分ける方法があります。
1000年でやっと一人前になれるというのが屋久杉の世界です。このヤクスギランドには1000年以上と思われるスギがまだまだ残されています。
30分コースとの分かれ道がありますが、ここはまっすぐ150分コース行きましょう。
30分コースだけの方はここで左側に曲がります。
その先に、ものすごい形をしたヒノキが出てきました。木の根元が大きく発達し、板のようになっています。きっと、これはヒノキが必死に生きてきた結果の形で、
- 屋久島の土壌は薄く、下は岩盤で、根っこが奥深くに入っていけない。
- そこに台風なので揺さぶられ 斜めに倒れかかった。
- けれども体勢を立て直すために、根元付近に木材を増やし、ジャッキアップするように体制を立て直した
台風が多い屋久島の森だから、植物たちも必死に生きている姿だと考えると、頑張れ!と応援したくなります。ふと周りの森を見渡すと、このあたりは本当に立派な屋久杉が多い森です。
しかも、本州などでよく見られる人が植えた人工林ではなく、江戸時代の伐採のあとに自然に復活してきた屋久杉の自然林です。本土だと神社の境内などに立派な杉林があったりますが、ヤクスギランドはそれに似た荘厳な雰囲気に包まれています。
また、暫く歩くと不思議な木が出てきます。
杉の木に取り付いて根っこを食い込ませているのはヤマグルマという木。屋久島のガイドブックだと絞め殺し植物などと、ちょっと怖いイメージで紹介されている木です。
屋久島には屋久杉に取り付いているヤマグルマはあちこちで見られるポピュラーな存在。ただ、いろいろな屋久杉とヤマグルマをよくよく観察してみると、絞め殺しているというよりは、屋久杉を頼って、ヤマグルマが必死にしがみついているようにも見えます。
もしかしたら、ヤマグルマはただ、屋久杉が好きなだけかもしれませんね。
時々出てくる給水ポイントで水をゲット
道の脇からお水発見。
このように水が美味しく飲めてしまうのが屋久島のありがたいところ。屋久島のお水は超軟水ですので、コーヒーにすると美味しいです。
ぼくは山に行くときはお湯沸かしセットとコーヒーを持っていって、その場所のお水でコーヒーを淹れるのが楽しみ。
次の分かれ道は吊橋の方向に行きます。
ヤクスギランド内を流れる荒川。花崗岩の大きな岩がゴロゴロしている雄大な川です。
舗装された道はここまでで、橋を渡るといきなり道がワイルドになります。
舗装された道はここまで。この先はしっかりとした登山道
ここから先はしっかりとした登山道になります。
雨が降っているときなどは、根っこや木の板がとても滑りますので、滑らない靴を履いていくといいです。
屋久島の山を歩く時はモンベルの登山靴がいいですよ。
またまた分岐点が出てきました。ヤクスギランド内はコースがたくさんあって分かれ道も多いです必ず地図看板がありますので、間違わないように進んでいきましょう。
150分コースに入ってくると道はいきなり急になり、根っこと岩が目立つようになります。
この先はなかなかのワイルドな登山道が続きます。滑りやすいスニーカーだと大変なことになるかも。しっかりとした登山靴が必要です。
徐々にお日様が上がってきて、森の中に光が差し込んできました。あさの森は本当に気持ちがいいです。
150分コース分岐点から20分位登ってくると、さらに大きな屋久杉のひげ長老が出てきます。
西暦2000年に一般公募によって名付けられました。苔に覆われた木の姿からこのネーミングになりました。
このサイズのヤクスギがあちこちに点在しているのが「ヤクスギランド」。ここまで登ってくると、ヤクスギランドのというネーミングの軽妙さはあまり感じられなくなります。
ひげ長老をすぎると出てくる携帯トイレブース。
ヤクスギランド内にはトイレ施設がありませんので、こういった場所で携帯トイレを使う必要があります。
内部はこんな感じ。
ここに携帯トイレをセットして使用します。
こんなトイレを一つ持っていくと、山での不安が解消されます。使い終わった携帯トイレは入り口まで持ち帰りです。入り口の施設トイレの近くに専用の回収ボックスがありますので、そこに捨てましょう。
東屋が見えていきたらここが150分コースの最高地点です。
ちょうどこのあたりで1時間ほど歩いてきましたので、休憩にちょうどいいですね。この日は朝食を抜いていてお腹が空いてきたので、ここでお弁当を食べてしまいました。
お弁当は安房地区の「できたて屋」さんの日替わり弁当。
このボリュームで550円でした。ヤクスギランドの売店は朝早くは開いていないし、食料も売っていないので、ヤクスギランドへ行く前に、麓の安房の街で調達しましょう。
太忠岳方面に続く分岐点。太忠岳は遠いので気軽に行かないように
食事が済んだら、また歩きはじめます。ちなみに、ここの東屋から上に登っていくと太忠岳登山道に入ります。
太忠岳も良いところなのですが、ここから先はしっかり登山になります。時間もかかりますので、気軽には行かないで下さい。
コース看板だと道が省略されていて、太忠岳も近そうに見えますが、間違えないようにしてくださいね。
時間と余裕のある方は途中の0.7km登った天文の森まで行ってみるといいでしょう。そこにも、ヤクスギの美林が広がっています。
この日は天文の森には行かずに、150分コースを素直に進んでいきます。
ヤクスギランドの奥の森はさらに静かになる
150分コースも最奥部に来ると、森は本当に静かになります。あまり人にも会いません。いちいち立ち止まって、森の様子を眺めてしまいます。ヤクスギランドの森の景観は本当に美しいです。
静かな森を歩いていたら珍しく人とすれ違いました。ジーンズ姿とペットボトルを片手に一人で歩いてきたお父さん。
「暑い、暑い、もっと簡単だと思ったんだけれど・・・」
とおっしゃってました。かなりカジュアルな格好だったので、ヤクスギランドというネーミングからもっと簡単なコースだと思っていたみたいですね。
道はまだまだ続きます。下りの道なども増えきて、川の音も聞こえてきました。道もこんな感じの際どい場所もでてきたりして、雨の日は滑りやすそうです。
小さな川を渡る沢津橋から眺めた空。この日は快晴でした。
雨が多いことで有名な屋久島ですが、こんな晴れた日もちゃんとあります。でも、雨の日もこのヤクスギランドの森はしっとりとして綺麗です。しっとりとした雨が似合う森なんです。
ヤクスギランドの巨木たちが連続して出てくるエリア
ここから先は巨木が次々と登場します。
まずは「天柱杉」です。
名前のごとく、天まで届く柱のように背の高い杉だから。
樹高33.8m。
台風の多い屋久島では、木はあまり大きくなれません。風当たりの弱い谷地形に背の高いスギが立っています。それでも40mを超すようなスギはあまりありませんね。
さらに「三根杉」。
江戸時代に切られた巨大なヤクスギの切り株の上から、またヤクスギが生えてきてしまった形。上に生えたヤクスギも相当の大きさになり、根っこが切り株を包むように伸びています。
これら巨木たちの推定樹齢が1000年とか2000年とかと普通に看板に書かれているので、時間の感覚がおかしくなってきます。暫く進むとまた分岐点が登場。
ヤクスギランドのコース内はたくさん分岐点があるので、迷わないように要注意です。近くに必ずコース看板があるので確かめていきましょう。
ヤクスギランド内を流れる荒川にかかる吊り橋を渡ります。
スタート直後に渡った吊り橋とは違う吊り橋で、もう少し川の上流部にあたるところです。
川を覗き込むと水がとても綺麗です。
スタートしてから2時間もすると、コースも終盤に差し掛かる頃になります。
最後の巨大なヤクスギ「仏陀杉」
立派な木なので、名前も立派。
コブがものすごい迫力。
これも推定樹齢が1800年とのこと。風格が違います。
仏陀杉を過ぎたら舗装された道に
仏陀杉から先は出口に近くなるのでまた舗装された歩きやすい道に変わってきます。
近くに休憩スペースもあります。
最後ゲートのようになっているくぐり杉をくぐれば出口はすぐ近くです。
それにしても不思議な形をしています。このくぐれるスペースに何かがあったのか、木が倒れて合体したのか、幹の途中から新たな根っこが出てきてしまったのか、謎です。
といった感じで、トータル3時間30分かけて出口に戻ってきました。お疲れ様でした〜。
ヤクスギランド150分コースはしっかりとトレッキング
150分コースですが、写真を撮ったり休憩したりしていると、3時間以上は必要ですね。
逆に150分で歩き終わるのがもったいないくらいの素晴らしい森だったので、ぜひ時間多めで余裕のあるスケジュールで行くといいと思います。
途中沢水が汲めたり、休憩ポイントがあったりするので、お湯沸かしセットやコーヒーなどをもって、もっとくつろぐのもいいでしょう。
静かな森をゆっくり歩いて、心からリフレッシュできるのがヤクスギランドのいいところです。ネーミングはちょっとカジュアルですが、屋久島でも有数の素晴らしい森です。
一日たっぷり時間のある方は太忠岳に挑戦するのもいいかもです。逆に半日だけ時間があるという方は、朝からスタートお昼には戻ってくるプランでもいいですね。
ヤクスギランドへのアクセス
車でのアクセス
- 安房の町から車で約30分
- レンタカーが必要です
バスでのアクセス
- 安房からヤクスギランド行きのバスが1日2便運行されています。
- 時刻表は、種子屋久交通のホームページで確認してください。
ヤクスギランド トレッキングに必要な持ち物
下記のような持ち物を用意すると良いでしょう
- 登山靴
- 雨具
- 水筒
- 帽子
- 日焼け止め
- 虫除け
- 携帯トイレ
- 地図
- コンパス
- 食料
ヤクスギランドのトレッキングツアー
ヤクスギランドのトレッキングは、ガイドツアーに参加するのもおすすめです。
ガイドツアーに参加すれば、自然や屋久島の歴史 について詳しく知ることができます。
また、送迎やアウトドア装備のレンタル を行っているツアーもあります。
ヤクスギランド トレッキングツアーを探すなら
ヤクスギランドのトレッキングツアーを利用するなら
ヤクスギランドに行きたいけど、自分たちでで行くのはちょっと不安。そんな時はガイドツアーに参加しましょう。ガイドツアーに参加すると、自然のことや屋久島のことをたくさん聞けるので、一気に屋久島ツウになれますよ。
さらにほかの参加者との交流も楽しいもの。ツアーに参加するだけで旅の楽しみが何倍にも膨れ上がります。
ガイドツアーに参加するには①現地ガイドショップに直接申し込むのが一番の方法。
屋久島のガイドツアーを探すなら
ガイドを付けずに行くことも可能ですが、どうせなら屋久島の話をたくさん聞けるガイドツアーに参加するとメリットもたくさん。送迎やアウトドア装備のレンタルなども行っているお店もあるので、是非活用してみてください。
ガイドツアーに参加を迷ったらこちらの記事が参考になります。
まとめ
ヤクスギランドは、屋久島の中でも特に静寂で、巨木に包まれた場所です。
最長の150分コースは、本格的な登山道ですが、自然の美しさ、巨木の風格、そして静寂の世界に心を奪われる、忘れられない体験になるでしょう。
屋久島を訪れた際は、ぜひヤクスギランドにも足を運んでみてください。