
「登山のレインウェアって何を基準に選べばいいの?」
アウトドア用品店へ行くと、沢山のレインウェアが並んでいます。お値段もピンキリで、ジャケットだけで100,000円以上もするものもあったりして、一体どれを選んだらいいのか悩んでしまいますよね。
お値段の違いの「カギ」は、そのウェアのブランドと使用されている防水透湿性素材にあります。特に有名なゴアテックス社の「ゴアテックス」はお値段が高くなる傾向があります。
長年、屋久島でアウトドアガイドの仕事をしてきた筆者は、屋久島の強烈な雨の中で、今まで何着ものレインウェアを使用してきました。
その経験から、「レインウェアはゴアテックスもいいけど、ゴアテックスじゃなくてもいいものがたくさんある」という結論に達しました。
ということで、本記事では、筆者がおすすめするレインウェアを防水透湿性素材の代表格であるゴアテックス製のものと、お値段が手頃な非ゴアテックス製のものも含めて選んでみました。ぜひ参考にしてみてください!
登山用レインウェアの選びときのポイントは?

注目すべきは登山用レインウェアの特徴である「防水透湿性素材」
登山用のレインウェアは「防水性」と「透湿性」がキーポイント。
- 「防水性」
⇨雨などが衣類内部に入らない機能。 - 「透湿性」
⇨衣類内の湿気を衣類外部に排出する機能
外からの雨を防ぐためなら、ビニール生地でもいいのですが、汗がでるような登山中は大量の水分を体から発します。防水性だけではダメで、衣類内に発生した汗を水蒸気として外部に逃がす「透湿性」も備わっている必要があります。
ただ、ひとことで防水透湿性素材といっても、いろいろな種類のものがあり、
- 機能性
- 重量
- 価格
に違いがあります。登山用のレインウェアは、防水透湿性素材にも注目してみると、さらに自分にピッタリのアイテムが選べます。
選び方1 しっかりとした防水透湿性素材の種類から選ぶ

繰り返しになりますが、レインウェアでよく使われる防水透湿性素材とは一言で言うと、「水は通さず、湿気を逃がす素材」という魔法のような性質の素材です。
- 外からの雨を防ぐのは→「防水」
- 内部の湿気を逃がすのは→「透湿」
防水透湿性素材の基本は超微細な穴が空いている「膜」で、その膜をサンドイッチするように布を張り合わせています。この膜に空いた超微細な穴が絶妙な大きさで、「水は通さないけど、湿気は通すよ」という性質を持っています。
防水透湿性素材の代表格「ゴアテックス」にも機能によって種類がある
代表的な防水透湿性素材である、「ゴアテックス」はナイロン等の生地でサンドイッチのように挟んで「3層にするのが基本構造」。
しかし、3層構造は生地が「重く、固く」なりがちなので、そのデメリット面をなくすために、2.5層のものもあります。サンドイッチで例えるならば具材をパン挟まずに、片面だけパンにしたオープンサンドのようなもの。
その他、ゴアテックス自体の性能や、組み合わせるナイロン生地を工夫することで軽さや耐久性などに違いを作り様々な種類が存在します。
- 軽さを追求したもの⇨
「GORE-TEX パックライト」→2.5層
「GORE-TEX パックライトプラス」→2.5層 - 耐久性を追求したもの
「GORE-TEX マイクログリッドバッカー」→3層 - 透湿性を追求したもの
「GORE-TEX C−KIT」→3層
それぞれのゴアテックスの生地にはモデル名が付与されていて、登山用のレインウェアでよく使用されているのは、
特徴として3層構造の「マイクログリッドバッカー」や「C-KNIT」などは耐久性が高め。一方、2.5層の「パックライト」、「パックライトプラス」は裏地がないため軽量・透湿性が高いのが特徴です。
ただ、それぞれの種類の垣根も薄れてきていて、ゴアテックスC-KNITは3層構造ながら透湿性やストレッチ性もあり、2.5層タイプのように「軽量」なのが特徴。選ぶのに悩ましいところです。
個人的には耐久性を考えて3層構造のマイクログリッドバッカーもしくはC-KNITがおすすめです。
非ゴアテックス系の防水透湿性素材は何がある?
ゴアテックス社のゴアテックス以外にも、各メーカーからも独自の防水透湿性素材を使ったレインウェアも発売されています。
どれもゴアテックス製品とは一味違う持ち味があって、目が離せない素材ばかりです。
- H2No(パタゴニア)
- FUTURELIGHT、HYVENT(ノースフェース)
- ドライエッジティフォン50000(ミレー)
- エバーブレス(ファイントラック)
- ドライテック(モンベル)
それぞれ、耐久性・性能・値段などに違いがありますが、ゴアテックス製品よりも価格が安い傾向があります。
ゴアテックスも非ゴアテックスも大きな差がなくなってきている
ゴアテックスを使用したものがそのブランド性や実績から安心感はあります。しかし、その他の非ゴアテックス系の素材も最近は優秀な素材が多く出回っています。
結論を言うならば「ゴアテックス製のものも、非ゴアテックス製のものもアウトドアメーカーのものならば大きな差はなくなってきている」と言っていいでしょう。
もちろん、細かく追求するならば、まだゴアテックスは優位な位置にあると思います。ただ、アウトドアメーカーが作ったレインウェアならば、かなりシビアな状況や特別な使い方をしない限り、非ゴアテックス製の素材も十分に使えると感じています。
選び方2 軽さはジャケットで400g程度まで

晴れた日でも、必ず登山に持っていくべきアイテムなのがレインウェア。
まったく使用せずに一日が終わるなんてこともあります。だから、ザックにしまったままでも負担になら無い重さのものを選ぶようにしましょう。
最近は200g前後という驚異的に軽量なレインウェアジャケットもありますが、その反面生地が薄すぎて、引っかかりに弱く破れやすいなんて言うこともあります。
軽ければ軽いほど持ち運びにはいいのですが、強度面の心配も出てきます。無雪期を中心に使うのであれば、400g以内のものを選ぶといいでしょう。
軽量性と生地強度も大切
登山用のレインウェアでは持ち運び易さのために、軽量性も大事ですが、それと同時に生地の強度も大切です。
軽量であるほど荷物が軽くなりいいのですが、その反面生地の強度が低下します。軽量と強度はトレードオフの関係にあるので、どちらを優先するのかも検討のポイントです。
まとめるとレインウェアを選ぶ時には
- 機能性
- 軽量性
- 強度性
などからそれぞれのバランスを取りながら、最適な回答を見つけ出していきます。
選び方3 ある程度の値段でもしっかりと使えるものを

レインウェアは雨の時だけ使うアイテムと考えると、「そんなに高いものでなくてもいいんじゃない」と考えてしまいます。
だけど、お店で値札をチェックするとレインウェアのジャケットだけで10万円近くするものもあって、最初はビックリです。
レインウェアは特別な素材を使っているので、どうしても値段も高くなりがちです。ただ、雨以外の時も出番が多く、風を遮ったり、強い日差しから肌を守ったり、とかなり重宝する着回せる便利なアイテム。
さらに、空気を遮断してくれるので、ラップで包むように体温をやんわりと維持してくれます。ダウンジャケットの上に羽織ることで効率よく保温もできます。
そのように考えると、様々なシチュエーションで着回せる応用範囲の広いアイテムなのです。
レインウェアは雨のときだけはなく、いつでも着られるアイテムです。高い性能とデザインのものを選んだほうが、使用頻度が増えて結果的にコスパが良いかもしれません。相場としてはゴアテックスを使ったジャケットで2〜5万円程度です。
登山用レインウェアのおすすめ

登山用のレインウェアのおすすめのメーカー
- アークテリクス
- ザ・ノース・フェイス
- ミレー
- ファイントラック
- パタゴニア
- プロモンテ
各メーカー、同じレインウェアでありながら、考え方や機能が少しづつ違い、国内メーカーと外国メーカーでも雨に対する考え方は違うようです。
特に雨の多い日本のメーカーであるモンベルやファイントラックなどは、防水性の高さに加えて少しでも快適に使えるように透湿機能もよく考えられたアイテムが多いような気がします。
日本人の体型に合うのは国内でデザインされている、ノースフェイスやモンベルなどがおすすめです。
また、デザインの良さならアークテリクスやマムートなどがおあすすめ。ただし、ちょっとお値段は高めになります。
もしどのメーカーにしようか迷ってしまったら、デザインも良く、お値段もちょうどいい【ノースフェイス】が個人的におすすめです
【レディース】登山用レインウェアのおすすめ
レディース用の登山レインウェアのおすすめリストです。
【メンズ】登山用レインウェアのおすすめ
こちらはメンズの登山レインウェアのおすすめリストです。
これらのレインウェアのスペックを並べてみました。
アイテム名 | 防水透湿性素材 | 重量(公称値) | 定価 |
---|---|---|---|
アークテリクス ベータ LT | GORE-TEX トリコット バッカーテクノロジー | 395g | 55,000円 |
アークテリクス ゼータ SL | GORE-TEX PACLITE®プラス | 310g | 44,000円 |
ザ・ノース・フェイス クライムライトジャケット | GORE-TEX Micro Grid Backer | 295g | 33,000円 |
ミレー ティフォン 50000 ストレッチジャケット | DRYEDGE™ TYPHON 50000 | 304g | 28,600円 |
ファイントラック エバーブレス フォトン | エバーブレス | 295g | 25,300円 |
パタゴニア トレントシェル 3L | H2Noパフォーマンス・スタンダード | 394g | 22,000円 |
プロモンテ ゴアテックスVSレインジャケット | GORE-TEX PRODUCT 3レイヤー | 390g | 19,250円 |
アークテリクス ベータ LT
高品質な作りで、ワンランク上のレインウェア
防水透湿性素材 | 重量 | 定価 |
---|---|---|
GORE-TEX トリコット バッカーテクノロジー | 395g | 55,000円 |
アークテリクスからはゴアテックス製のジャケットのモデルがたくさんありますが、ハイキング用のレインウェアはベータLTが第一候補。。裏地のトリコットバッカーは、耐久性も良く着心地もいい素材。重量も機能もバランスが良いので、長く多方面で使える1着です。。絶妙なカラーリングとハイデザインで、街着としても利用できコスパよしです。アークテリクスのシェル全般に言えるのが、体に沿ったパターンで動きやすく、視界が良好でストレスのないフードのクォリティの高さ。お値段は少々高く感じますが、着れば納得ですよ。
このレインウェアがおすすめな人
- 着心地のいいレインウェアを探している
- おしゃれなレインウェアをさがしている
- 普段遣いもできるものを探している
アークテリクス ゼータ SL
軽るさと、美しさを兼ね揃えたレインウェア
防水透湿性素材 | 重量 | 定価 |
---|---|---|
GORE-TEX PACLITE®プラス | 310g | 44,000円 |
アークテリクスからもう一つのおすすめはゼータSLモデル。2.5層ゴアテックスパックライトプラスを使用することで軽量性310gを達成しています。軽さのおかげでトレッキングやハイキングでも気兼ねなく持ち出すことができます。アークテリクスのシェル全般に言えるのが、体に沿ったパターンで動きやすく、視界が良好でストレスのないフードのクォリティの高さ。お値段は少々高く感じますが、着れば納得ですよ。
このレインウェアがおすすめな人
- 軽いレインウェアを探している
- おしゃれなレインウェアをさがしている
- 普段遣いもできるものを探している
ザ・ノース・フェイス クライムライトジャケット
機能・値段・重量のバランスが良いコスパに優れたレインウェア
防水透湿性素材 | 重量 | 定価 |
---|---|---|
GORE-TEX Micro Grid Backer | 295g | 33,000円 |
ザ・ノース・フェイスは日本人の体型にあったデザインで、着心地がよく誰にでもおすすめできるメーカーです。人気のクライムライトジャケットはレインウェアの「基本」とも言える逸品。高機能な3層構造のゴアテックスマイクログリットパッカーを使用しているにも関わらず、重量が公称値295gという驚きの軽量性。なのに、値段も高くなく、初めてのレインウェア選びに迷ったら、買って損のないアイテムです。
このレインウェアがおすすめな人
- 軽いレインウェアを探している
- おしゃれなレインウェアをさがしている
- 普段遣いもできるものを探している
詳細はこちらでレビューしています
ミレー ティフォン 50000 ストレッチ・ジャケット
レインウェアとは思えないほどのしなやかさ
防水透湿性素材 | 重量 | 定価 |
---|---|---|
DRYEDGE™ TYPHON 50000 | 304g | 28,600円 |
フランスのミレーからは、しなやかな着心地が特徴のティフォン50000ストレッチジャケットがおすすめ。レインウェア特有の硬さが少なく、透湿性も高いので、雨が降っていないときでもウィンドブレーカー代わりになります。中には家を出るときから、一日中着続けるという人も。レインウェアの概念が変わるアイテムです。
このレインウェアがおすすめな人
- 軽いレインウェアを探している
- 透湿性の高いレインウェアを探している
- しなやかな素材で動きやすさを重視している
プロモンテ ゴアテックスVSレインジャケット
ゴアテックスなのに20,000円を切る値段
防水透湿性素材 | 重量 | 定価 |
---|---|---|
GORE-TEX PRODUCT 3レイヤー | 390g | 19,250円 |
山岳用テントで有名なプロモンテのレインウェア。ゴアテックスを使用しているのにで20,000円を切るという信じられないお値段です。フードが収納式なので、雨のときはレインハットを使うから、フードはあまり使わないという方にはおすすめかもしれません。さらにメイドインジャパンの安心なつくり。老舗のアウトドアブランドが作る堅実なレインウェアです。ゴアテックスをまだ試したことのない方は、このレインウェアから始めてみたらいかがでしょうか?
このレインウェアがおすすめな人
- お値段重視
- でもゴアテックスがいい
- フードは収納式がいい
レインウェアのメンテナンス方法を知って長く快適に使う
どんなに高機能なレインウェアでも、メンテナンスを怠っていれば生地の撥水性が落ちてしまいます。そうなると、せっかくの透湿性が低下し、衣類内側の水蒸気が逃げず、衣服が湿ってしまうことも。
- 生地表面の汚れ
- 洗濯の仕方撥水
- コーティングの低下
解決策としては
- 正しい洗濯
- 撥水剤の塗布
- アイロンや乾燥機などの熱を加える
の3つが必要になります。
専用の洗剤&コーティング剤が売られているので、撥水力が低下したら新しいものに買い換える前に、一度レインウェアをメンテナンスをして下さい。
新品同様にレインウェアの撥水性が蘇ります。私の方法は以下の撥水剤を使用した後に、コインランドリーに持ち込んで乾燥機を20分以上に回すと、満足の行く撥水が得られます。
ただ、レインウェアの洗濯表示で乾燥機不可のものもあるので、そこは自己責任でお願いします。
こちらで詳細を確認できます。
まとめ:登山のレインウェアは登山以外の用途を考えて
以上、登山におすすめのレインウェアについてご紹介しました。
雨の時にだけ着るものと考えると、お値段が高く感じてしまうレインウェア。しかし、デザイン性の高いものを選ぶと、街着としても着れて応用範囲が広がります。
普段から着られるものを買えば、意外とコストパフォーマンスがいいアイテムに変わるのです。
また、お値段重視で選んでも、探せば高機能なアイテムも見つかります。
山だけではなく街でも電車の中と外の温度差や、急な雨などのアウトドアレインウェアの防水透湿性能が発揮される場面が意外と多いです。
予期せぬ災害時用としてもひとつ揃えておくといいですね。